暮らしの輪郭を、対話で描く
・暮らしの輪郭を、対話で描く
暮らしに寄り添う設計を、ひとつひとつ丁寧に。
家づくりは、図面や仕様を決める前に「どんな日々を大切にしたいか」を確かめるところから始まります。私たちは夫婦ふたりの工務店として、じっくりお話を伺い、言葉の奥にある価値観や優先順位まで一緒に整理しながら、住まいの骨格を組み立てていきます。「要望を叶える」だけではなく、敷地条件やご予算、これからの暮らし方まで踏まえ、無理のないかたちに整える。そのための対話を、私たちはいちばん大切にしています。
“理想の暮らし”を言葉にするところから
最初の打ち合わせで私たちが知りたいのは、「何帖のLDK」よりも、暮らしの風景です。たとえば、どんな朝で始まり、どんな夜で終わるのか。休日は家で何をして、どこで心がほどけるのか。家族と過ごす時間と、ひとりになれる時間、その両方が無理なく共存しているか。こうした日常の輪郭を、会話の中から丁寧にすくい上げていきます。
- 朝はどんなふうに過ごしたいか(光・音・動き出す場所)
- 休日は家で何をしたいか、どう過ごしたいか(庭・趣味・来客)
- ひとりの時間も大切にしたいか(こもれる居場所/集中できる場所)
- どこで落ち着けると嬉しいか(居場所の数と質)
- 家事や仕事の流れで、負担に感じていることはあるか(動線・収納・片付く仕組み)
- 家に求めるのは「便利さ」か「落ち着き」か「開放感」か(優先順位の確認)
“言葉の奥”にある、ほんとうの要望を整理する
お客様のご要望は、最初から明確に言葉になっているとは限りません。「明るい家がいい」「収納を増やしたい」「家事が楽に」――その一言の背景には、暮らしの困りごとや、叶えたい気持ちがあります。私たちは質問を重ねながら、要望を“仕様”ではなく“目的”として捉え直し、優先順位を一緒に整えます。たとえば、「明るい」は光をたっぷり取り込む明るさなのか、光を回して影も味方にする明るさなのか、光を絞って落ち着きを残す明るさなのか。「収納」は量の問題なのか、散らかりにくい動線なのか、見せない暮らし方なのか。同じ言葉でも、正解はご家族ごとに違います。だからこそ、急いで図面にせず、まず対話で輪郭を描きます。
暮らしを“前提条件”まで含めて考える
理想を描くだけでなく、現実の前提も一緒に整理します。ご予算の枠、土地の条件、家族構成の変化、働き方、子どもの成長、将来の介護や住み替えの可能性。今だけではなく、5年後・10年後の暮らしまで想像して、「何を残し、何を削るか」を判断できる状態にしていきます。
“決めるための会話”をつくる
家づくりは決めることが多く、不安になりやすいものです。私たちは、迷いが出るのは当然だと考えています。大切なのは、迷いを減らすことではなく、納得して選べる状態をつくること。選択肢を並べ、メリット・デメリットを整理し、価値観に照らして決める。そうして一つずつ積み重ねていきます。こうした対話を重ねることで、“間取りの正解”ではなく、そのご家族にとっての正解が、少しずつ輪郭を持って立ち上がってきます。