収納は多い方がいい?|暮らしの動きから考える収納計画
こんにちは。インテリアコーディネーターの石原紗知江です。
埼玉県深谷市を中心に、埼玉県北部や群馬県南部で家づくりのお手伝いをしています。

収納は、たくさんあれば片付くのでしょうか?
家づくりを考えるとき、「収納はできるだけ多くほしい」
と思う方は多いのではないでしょうか。
今の家は収納が足りない。
物が出しっぱなしになってしまう。
新しい家では、すっきり片付くようにしたい。
そう考えると、収納は多い方が安心なように思えます。
けれど、収納を増やせば、それだけで家が片付くわけではありません。
大切なのは、収納の「量」だけではなく、
何をしまうのか、どこで使うのか、そしてどこへ戻すのか。
同じ大きさの収納でも、場所や奥行き、
扉の有無によって、使いやすさは大きく変わります。
収納計画は、空いた場所に収納をつくったり、
間取りが決まってから収納量を確認したりするものではありません。
持ち物と暮らしの動きを整理しながら、必要な場所に、必要な収納を考える。
今回は、実際の暮らしの中で感じてきたことも交えながら、
家づくりの収納について考えてみたいと思います。
1.収納は「量」だけでは使いやすくならない
私たちが以前、住んでいた家にも、収納はそれなりにありました。
それでも、暮らしていると「使いにくい」と感じることがありました。
その理由のひとつが、収納のつくり方です。
当時の家は、ほとんどの収納に扉が付いていました。
物をしまうためには、まず扉を開けて、しまって、また閉める。
ほんのひと手間ですが、毎日のこととなると、この小さな動作が意外と面倒になります。
とくに、毎日のように使うものほど、扉の開け閉めを面倒に感じました。
きれいに片付けるための収納であっても、戻すまでにいくつもの動作が必要になると、
つい手近なところに置いてしまいます。
片付けが苦手なのではなく、戻しにくい収納になっていることもあるのだと思います。
また、奥行きの深い収納も多くありました。
奥行きがあれば、その分たくさん入ります。
収納量だけを考えれば、一見便利そうです。
ところが、手前に物を置けば、奥に何が入っているのか分からなくなります。
取り出すために手前の物を動かさなければならないこともあります。
「確かあったはず」と探したり、あることを忘れて同じような物を買ってしまったり。
使わないものが、そのまま奥に残ってしまうこともありました。
入居してから、退去するまで同じ場所に居続けた物もありました。
収納量が多いことと、持っている物をきちんと把握できることは、同じではありません。
さらに、扉を閉めれば室内から物が見えなくなる一方で、
湿気がこもりやすいことも気になっていました。
こうした経験から、今は収納を見るときに、
単純な広さだけでは考えないようになりました。
家づくりでは「収納は何帖ありますか」「収納は多めにほしいです」と、
収納の広さや量が気になることもあると思います。
もちろん、家族の持ち物に対して必要な収納量を確保することは大切です。
けれど私たちは、収納は多ければ多いほどいいとは考えていません。
何をしまうのか。
どこで使うのか。
どのくらいの奥行きが必要なのか。
毎日使うものなのか、ときどき使うものなのか。
そして、扉は本当に必要なのか。
収納は「何帖あるか」だけではなく、
こうした一つひとつを考えていくことで、使いやすさが変わります。
必要なのは、たくさん入る収納をつくることではなく、
持っているものを把握でき、使ったものを無理なく戻せる収納をつくること。
私たちは、そこまで考えることが収納計画だと思っています。
2.収納を増やす前に、持ち物を整理する
では、実際にはどのくらいの収納が必要なのでしょうか。
収納計画を考えるとき、まず知っておきたいのは、
今どのくらいの物を持っているのかということです。
洋服、本、日用品、食品、季節用品、趣味のもの。
家の中にある物を一度整理してみると、
「思っていたより多かった」「これはほとんど使っていない」と気づくことがあります。
私たちも家づくりの打ち合わせでは、持ち物について確認していきます。
ただ、「今ある物が全部入る収納をつくりましょう」という意味ではありません。
よく出てくるのが、「一応とっておきたい」「念のため残しておきたい」というものです。
もちろん、すべてを処分する必要はありません。
思い出の品や、使用頻度は低くても必要なものもあります。
一方で、「いつか使うかもしれない」という理由だけで物を残し、
そのための収納を家の中に増やしていくことには、私たちは慎重です。
収納があれば、物は入ります。
そして空いている場所があれば、そこにまた物をしまうことができます。
そうして「一応」「念のため」の物が少しずつ増えていけば、
せっかく収納をつくっても、やがてその収納もいっぱいになります。
家づくりでは、収納を増やせば、その分だけ床面積も必要になります。
収納も家の一部です。
何を残すのか分からないまま収納だけを大きくすることは、
使うかどうか分からない物のために家を大きくすることにもつながります。

だからこそ、収納計画では、単に物の量を数えるだけではなく、
よく使うもの。
ときどき使うもの。
季節によって使うもの。
長く保管しておくもの。
というように、持ち物を分けて考えます。
家族構成や暮らし方が変われば、持ち物も変わります。
子どもの成長とともに増えるものもあれば、反対に必要なくなるものもあります。
今持っている物をすべてそのまま新しい家へ持っていくことを前提にするのではなく、
これからも必要なものなのかを一度考えてみる。
収納計画は、物をしまう場所を考えるだけではなく、
何を持って暮らすのかを考えることでもあります。
私たちは、「念のため」の収納を増やすのではなく、
必要なものを整理したうえで、必要な収納量を考えています。
3.使う場所と、戻す場所を考える
収納量を考えたら、次に大切なのが「どこに収納するか」です。
同じものを同じだけ収納できても、使う場所から離れていれば、
戻すことが面倒になります。
反対に、使う場所の近くに戻す場所が決まっていれば、
片付けるために家の中を行ったり来たりする必要はありません。
わが家には、壁一面につくった大きな本棚があります。
家族みんな本を読むことが多く、以前の家でもたくさんの本を持っていました。
新しい家を考えるとき、この本をどこにしまうかは、
私たちにとって大切な収納計画のひとつでした。
そこで、本を家のあちこちに分けてしまうのではなく、
一か所にまとめて収納することにしました。

本を探すときは、まずここを見る。
読み終わったら、ここへ戻す。
収納する場所がはっきりしているので、たくさんの本があっても、
どこにあるのか把握しやすくなりました。
でも、この本棚をつくってよかったと思う理由は、収納量だけではありません。
家族それぞれが持っている本が同じ場所に並ぶことで、
自分では選ばなかった本を手に取ることがあります。
子どもが読んでいる本を私が読んだり、私が買った本を家族が読んだり。
それぞれの持ち物だった本が、一つの本棚に集まることで、
家族で共有するものにもなりました。
これは、暮らし始めてから気づいたことです。
収納というと、どうしても「物をしまって見えなくする場所」と考えがちです。
けれど、しまうものによっては、すべてを隠す必要はありません。
毎日使うものなら、すぐ手に取れて、戻しやすい方がいい。
反対に、使用頻度の低いものなら、
普段過ごす場所から少し離れていても困らないことがあります。
大切なのは、何でも同じように収納するのではなく、
何を、どこで使い、どのように戻すのかを考えること。
私たちは収納を考えるとき、収納量だけを間取りに当てはめるのではなく、
使う場所との関係まで考えます。
必要なものにきちんと場所をつくり、使ったあとに自然と戻せるようにする。
収納もまた、家の中での人の動きと一緒に考えるものだと思っています。
必要な場所に、必要な収納を
収納は、家の中に物をしまうためだけの場所ではありません。
たくさんつくれば片付くわけでも、広ければ使いやすくなるわけでもありません。
持っている物を整理し、何を残すのかを考える。
そして、それをどこで使い、どこへ戻すのかを考える。
そこから必要な収納量や場所、奥行き、扉の有無などを決めていくのが、
私たちの考える収納計画です。
収納を増やすためには、その分の床面積も必要になります。
だからこそ「念のため」の収納を増やすのではなく、
本当に必要なものには、使いやすい場所をきちんとつくることを大切にしています。
家の広さにも、使える場所にも限りがあります。
その中で、何を大切にして、どこに場所を使うのか。
必要な場所に、必要な収納をつくる。
収納も家全体の間取りと切り離さず、暮らしの動きと一緒に考えることが、
片付けやすく、使いやすい家につながると私たちは考えています。
石原紗知江|インテリアコーディネーター
埼玉県深谷市を中心に、車で90分圏内(埼玉県北部・群馬県南部)で
家づくりのお手伝いをしています。
イシハラアーキテクトでは、耐震・断熱など住まいの基本性能を大切にしながら、
暮らしに必要な広さや収納、家事動線などを整理し、
一級建築士とインテリアコーディネーターが住まい全体を考えています。
施工事例や家づくりの考え方をご覧いただき、
「この考え方で家をつくりたい」と感じていただけましたら、
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