10年後も好きでいられる家とは

公開日:2026/09/28(月) 更新日:2026/09/28(月) 家づくりのこと
こんにちは。インテリアコーディネーターの石原紗知江です。
埼玉県深谷市を中心に、埼玉県北部や群馬県南部で家づくりのお手伝いをしています。

 

 

今の「好き」だけではなく、変わっていく暮らしのことも考えてみる

 

 

家を建てるとき、私たちはどうしても「今」を基準に考えます。

 

今の家族のかたち。
今の暮らし方。
今、好きなもの。

 

そして、今ほしいと思っているもの。

 

もちろん、それはとても大切なことです。

けれど、10年後も同じ暮らしをしているでしょうか。

 

子どもは成長し、家族の過ごし方も変わります。
仕事や趣味が変わることもあれば、

家の中で心地よいと感じる場所も変わっていくかもしれません。

 

だから私たちは、今の暮らしだけに家を合わせすぎないことも大切だと考えています。

 

使い方を変えられる場所。
暮らしに合わせて柔軟に変えていける仕組み。
あえて用途を決めすぎない余白。

 

一方で、家を建てたあとでは簡単に変えられないものもあります。

 

家そのものの性能や構造、光の入り方、窓の位置、外とのつながり。
そうした部分には、家を建てるときだからこそ、きちんと時間と費用をかけておく。

 

変えられるものと、変えにくいもの。

 

その違いを考えながら家をつくることが、10年後、20年後にも「この家が好き」と思えることにつながっていくのではないでしょうか。



1.10年後、私たちの暮らしは変わっている

 

 

我が家も、家を建ててから6年が経ちました。

家を建てた頃は、子どもたちもまだ小さく、家の中は今よりずっと賑やかでした。

 

リビングやダイニングにはいつも誰かがいて、子どものものがあちこちに置かれていて。
それが当たり前の毎日でした。

 

けれど、6年という時間の中でも、家族の暮らしは少しずつ変わっています。

 

子どもたちは成長し、それぞれの時間を過ごすことが増えました。
あと数年もすれば、大学進学などをきっかけに家を出ることもあるでしょう。

 

そう考えると、今から10年後、

この家で暮らしているのは夫婦二人になっているかもしれません。

 

ついこの間まで当たり前だった賑やかな毎日が、

すでに少し懐かしく感じられることもあります。

 

家を建てるときには、どうしても「今の家族」を思い浮かべます。

 

子どもが何人いるから子ども室はいくつ。
持ち物がこれくらいあるから収納はいくつ。
今の生活に合わせて必要な場所を考えていく。

 

もちろん、今の暮らしをきちんと考えることは大切です。

でも、家族の暮らしは、家が完成したところで止まってはくれません。

 

子どもは成長し、いつか家を離れる。
夫婦二人の時間が増え、年齢を重ねれば、家の中での過ごし方も変わっていきます。

 

変わるのは、家族構成だけではありません。

 

この数年だけを振り返ってみても、働き方や家で過ごす時間は大きく変わりました。
これから先も、家で仕事をしたり、新しい趣味を始めたり、

今は想像していないことに時間を使うようになるかもしれません。

 

そして、家を取り巻く社会の「当たり前」も変わっていきます。

 

省エネや環境への配慮も、以前は付加価値として語られることが多かったものが、

少しずつ住まいの基本として考えられるようになっています。

 

家は、今だけを暮らすためにつくるものではありません。

 

だからといって、10年後、20年後の暮らしを予想して、

その通りになるようにつくることもできません。

 

大切なのは、未来を決めてしまうことではなく、

変化したときに受け止められるようにしておくことだと思います。

 

たとえば、子ども室。

「子ども室」としてしか使えない場所ではなく、

子どもが巣立ったあとは、仕事をする場所にも、趣味を楽しむ場所にも、

夫婦それぞれが一人で過ごす場所にもなる。

 

収納も同じです。

今持っているものだけを基準に細かくつくり込みすぎると、

持ち物や暮らし方が変わったとき、かえって使いにくくなることがあります。

何をどこにしまうのかはきちんと考えながらも、

暮らしの変化に合わせて使い方を変えられる余地を残しておく。

 

家族のかたちも、暮らし方も、好きなものも変わっていきます。

 

だから、10年後の正解を今決めるのではなく、

その時の自分たちがまた心地よい使い方を見つけられる家にしておく。

 

我が家もこれから、子どもたちが巣立ち、

夫婦二人の暮らしになれば、今とは違う家の使い方を見つけていくのだと思います。

 

少し寂しいような、それでも、その先の暮らしも楽しみなような。

 

そんな変化まで受け止めながら、一緒に歳を重ねていけることも、

家を長く好きでいるためのひとつの理由なのかもしれません。



 

2.そのときの「好き」だけで決めない

 

 

先日、数年前に家を建てていただいたお客様のお宅へ伺う機会がありました。

 

久しぶりにお会いして、実際に暮らしてみてどうだったか、

家を建てた頃のこと、今の暮らしのことなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。

その中で、とても印象に残った言葉があります。

 

「流行を追いすぎなくてよかった」

 

家づくりをしていた当時、SNSや住宅雑誌などでよく見かけていたものがあったそうです。

その頃は素敵に見えて、取り入れてみたいと思ったものもあった。

 

けれど、実際には採用しませんでした。

 

それから数年。

当時あれほどよく見かけたものが、

今ではほとんど見かけなくなっていたり、使いにくさが語られていたり。


ご自身も、今となってはそれほど魅力を感じなくなったそうです。

 

「あのとき採用しなくてよかったね」

そんな話を聞きながら、家づくりにおける「好き」について、あらためて考えました。

 

流行しているものが悪いわけではありません。

新しいものには、それまでになかった便利さや楽しさがありますし、

流行の中から自分に合うものが見つかることもあります。

 

ただ、家は洋服や小物のように、

気分が変わったからと簡単に取り替えられるものばかりではありません。

 

そのときに素敵だと思ったもの。
SNS
で何度も目にして欲しくなったもの。
みんなが取り入れているから気になったもの。

 

それは、本当に自分たちが長く好きでいられるものなのか。

家づくりでは、一度そんなふうに立ち止まって考えてみてもいいと思います。

 

私たちも打ち合わせの中で、今の「好き」だけを見るのではなく、

その方がこれまでどんなものを選んできたのか、どんな場所を心地よいと感じるのか、

普段どんな暮らしをしているのかを大切にしています。

 

長く使っている家具。
ずっと好きな色。
何年経っても手放さないもの。

 

そんなところに、その人自身の「好き」が隠れていることがあります。

 

そしてもうひとつ大切なのは、

すべてを10年後も好きでいられるものにしようとしないこと。

 

家具やカーテン、照明、小物など、暮らしながら変えていけるものもあります。

 

そのときの気分や家族の変化に合わせて、好きなものを取り入れ、また変えていく。
それも暮らしの楽しみです。

 

一方で、簡単には変えられないものほど、そのときの流行だけで決めない。

 

数年後のお客様の言葉を聞いていると、10年後も好きでいられる家とは、

何も変えずに暮らし続ける家ではないのだと思います。

 

変えて楽しむところと、長く大切にするところ。

 

その両方があるからこそ、

家もまた、そのときどきの自分たちに馴染んでいくのではないでしょうか。



 

3.未来を決めすぎない家をつくる

 

 

10年後の暮らしがわからないからこそ、

家をつくるときに、すべてを決めすぎないことも大切にしています。

 

たとえば、子ども室。

私たちが設計する家では、最初から小さな個室に分けるのではなく、

大きなひとつの空間としてつくることが多くあります。

 

子どもが小さいうちは一緒に使い、

成長したら、そのときの家族に合わせて使い方を考える。

 

実際、これまで暮らし始めたお客様から

「やっぱり壁をつくって個室にしたい」と言われたことは、今のところありません。

 

兄弟や姉妹だけではなく、男の子と女の子のご家庭でも同じです。

 

家具を置いたり、それぞれの居場所をつくったりしながら、

完全に分けるのではなく、緩やかに空間を分けて暮らしているようです。

 

最初から将来の使い方まで決めてしまわなくても、

暮らす人は、そのときの家族にちょうどいい方法を見つけていくのだと思います。

 

造作家具や収納についても、考え方は同じです。

打ち合わせでは、「ここにこれを入れたいので、ミリ単位で合わせてつくってほしい」

とご相談いただくことがあります。

 

けれど私たちは、収納するものにぴったり合わせて、

細かくつくり込みすぎることはあまりおすすめしていません。

 

たとえば、洗面まわりで使う美容家電。

今使っているものがきれいに収まる専用の収納をつくれば、

完成したときには気持ちよく収まります。

 

でも、その美容家電を10年後も使っているでしょうか。

 

家電は買い替えます。
同じような用途のものでも、大きさや形は少しずつ変わっていきます。

 

美容家電に限らず、掃除機も調理家電も、収納用品も、

これから先ずっと同じ大きさとは限りません。

 

だから私は打ち合わせでも、

「収納や造作家具は、ざっくりがいいんです」

とお話ししています。

 

もちろん、何をどこに収納するのかを考えないということではありません。

暮らしの動きを考え、必要な場所に必要な収納をつくる。


そのうえで、中のつくり方には少し余裕を持たせておく。

 

今持っているものが寸分違わず収まることよりも、

持ち物が変わっても使い続けられることのほうが、

長く暮らす家には大切だと考えているからです。

 

絶対にサイズが変わらないものは、そう多くありません。

 

家族も変わる。
持ち物も変わる。
暮らし方も変わる。

 

だから、変えられるところには、変えられる余地を残しておく。

 

一方で、家を建てたあとでは簡単に変えられないものがあります。

 

構造や断熱性能といった家の基本性能。
光の入り方や窓の位置。
庭とのつながりや、家の中から見える風景。


家全体の骨格となる部分です。

 

こうしたものは、暮らし始めてから家具を買い替えるように

簡単に変えることはできません。

 

だからこそ、家を建てるときにきちんと考え、

必要なところにはきちんと費用をかけておく。

 

すべてにお金をかけるのではなく、後から変えにくいものにこそ、最初に投資する。

 

それも、長く暮らす家を考えるうえで大切なことだと思います。

すべてをつくり込むことが、丁寧な家づくりとは限りません。

 

変えられるものは、変えられるように。


後から変えにくいものは、最初にしっかりと。

 

未来を考えるということは、10年後の暮らしを今決めてしまうことではありません。

 

そのとき家族がどう変わっていても、

持ち物が変わっていても、

今とは違う暮らしをしていても。

 

その時々の自分たちに合った暮らし方を、またこの家の中で見つけていける。

 

そんな余地を残しておくことが、

10年後も好きでいられる家につながっていくのだと思います。



 

変わりながら、好きでいられる家

 

 

10年後も好きでいられる家。

 

そう聞くと、いつまでも飽きないデザインや、

ずっと変わらないものを想像するかもしれません。

 

でも、このコラムを書きながらあらためて思うのは、

10年後も好きでいられる家とは、10年間変わらない家ではないということです。

 

家族は変わります。


暮らし方も、持ち物も、好きなものも変わっていきます。

 

我が家も、家を建ててから6年。

子どもたちが小さかった頃とは、家の中での過ごし方も少しずつ変わってきました。

 

そして、これから先はもっと変わっていくでしょう。

いつか子どもたちがこの家を出て、夫婦二人になったとき。


今は子どもたちが使っている場所を、まったく違う使い方で楽しんでいるかもしれません。

それでいいのだと思います。

 

家族の変化に合わせて、家具を動かしたり、部屋の使い方を変えたり。
好きなものが変われば、インテリアを変えることもあるでしょう。

 

その一方で、窓から入る光や、庭を眺める時間、自然素材の手触り、

冬の暖かさや夏の心地よさは、変わらず暮らしのそばにある。

 

変えていくものと、変わらず残るもの。

 

その両方がありながら、家と一緒に時間を重ねていく。

 

家づくりは、完成した日がゴールではありません。

むしろ、そこから始まる暮らしのほうが、ずっとずっと長い。

 

だから、今の「好き」だけで家を完成させてしまわず、

その先に続く暮らしのために、少し余白を残しておく。

 

10年後、今とは違う毎日を過ごしている自分たちが、

この家でまた新しい心地よさを見つけている。

 

そんな家ならきっと、時間が経っても

「この家でよかった」と思えるのではないでしょうか。






石原紗知江|インテリアコーディネーター

埼玉県深谷市を中心に、車で90分圏内(埼玉県北部・群馬県南部)で、注文住宅の家づくりや間取りのご相談を承っています。
対話を通して暮らしの動きを整理し、「片付く仕組み」と「暮らしやすい動線計画」を大切にした住まいをご提案しています。
頑張らなくても自然と整う暮らしを、設計の段階から丁寧に形にしていきます。
 
これから家づくりを考える中で、「自分たちの場合はどう考えればいいのだろう」と感じたときは、お気軽にご相談ください。
ご相談はまだ具体的でなくても大丈夫です。
施工エリアについても個別にご案内しております。

 

 

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