その湿気、どこから来ている? 家の中の水蒸気を追いかける

公開日:2026/06/27(土) 更新日:2026/06/27(土) 住宅性能

 

こんにちは。イシハラアーキテクト代表の一級建築士 石原健です。

今回のテーマは「家の中の水蒸気は、どこからくるのか」。以前お話しした"エアコンによる除湿"の、いわば続編です。

私たちがふだん除湿しようとしているあの湿気は、そもそもどこで生まれ、どこから入ってくるのでしょうか。
暮らしの中にある身近な発生源から、プロでも見落としがちな意外な侵入経路まで、順番にたどっていきましょう。

 

快適な湿度を保つために知っておきたいこと

 

家の快適さを考えるとき、多くの人がまず「室温」を思い浮かべます。
冬に暖かい家、夏に涼しい家。
しかし、本当に快適な室内環境を考えるうえでは、温度だけでなく「湿度」も切り離して考えることはできません。

同じ26℃の室内でも、湿度が低ければさらっと快適に感じます。
反対に湿度が高ければ、温度以上に蒸し暑く、不快に感じることがあります。
冬も同じで、室温が十分にあっても湿度が低すぎると喉や肌が乾燥し、逆に高すぎると窓まわりの結露やカビの原因になることもあります。

快適な家とは、ただ暖かい・涼しいだけの家ではなく、温度と湿度のバランスが整っている家です。
その湿度を左右しているのが、空気中の「水蒸気」。では、この水蒸気は、いったいどこからくるのでしょうか。

 

暮らしているだけで、水蒸気は発生している

 

まず知っておきたいのは、人は普通に暮らしているだけで、家の中にたくさんの水蒸気を出しているということです。
呼吸する。料理をする。お風呂に入る。洗濯物を室内に干す。加湿器を使う。観葉植物を置く。冬に石油ストーブやガスファンヒーターを焚く。
——これらはすべて、室内に水蒸気を発生させます。

たとえば4人家族が普通に暮らしているだけでも、1日に10リットル以上の水分が水蒸気として室内に放出されると言われています。
10リットルは、2リットルのペットボトル5本分。そう考えると、家の中の湿度が上がるのは当然とも言えます。

特に見落としやすいのが、室内干しと開放型の暖房です。乾いていく洗濯物の水分はそっくり空気へ移りますし、
石油ストーブやガスファンヒーターは、燃やした灯油やガスとほぼ同じ量の水分を出す隠れた加湿器
お風呂の湯気や料理の蒸気も大きな発生源です。

つまり家の中の水蒸気は、外から入ってくる前に、まず「暮らしそのもの」から生まれているのです。
——では、外からはどうでしょうか。

 

梅雨の夜、窓を開けると入ってくる水

 

梅雨どき、昼の暑さがやわらいだ涼しい夜。「気持ちいいから窓を開けて換気しよう」
——よくある場面ですが、ここに落とし穴があります。

熊谷地方気象台の実測値で見てみましょう。ある梅雨の夜更けの外気は、気温23.9℃、湿度92%でした。
室内が26℃55%だとすると、両者の「空気が含む水蒸気の量(絶対湿度)」はこうなります。

外気(23.9℃92%……19.9 g/m³

室内(26℃55%……13.4 g/m³

外のほうが2℃ほど涼しく、体感はぐっと過ごしやすい。なのに、空気に含まれる水蒸気の実量は、外気のほうが1m³あたり約6.5gも多いのです。
気温が下がっても湿度90%超の梅雨の夜は、室内よりずっとじめじめしている、というわけです。

これを32坪の家(容積およそ254m³)にあてはめ、
1時間で空気がそっくり入れ替わったと仮定すると、6.5 g/m³ × 254m³ ≒ 1,651g、およそ1.6リットル。
涼しさを取り込むつもりの1時間の換気で、ペットボトル約1本分の水が、水蒸気として家の中に入ってくる計算です。

夜風がひんやり気持ちいいのは風のおかげで、それは一時的。
風が止むと涼しさは消え、入ってきた湿気だけが残って、ジメジメ蒸し暑い室内になります。
涼しさだけが欲しいなら、窓を開ける換気よりエアコンの除湿(冷房)に分があります。
「外が涼しい=乾いている」とは限らない。梅雨の夜は、温度ではなく水蒸気の量で考えるのがコツです。

 

新築1年目は、家そのものが水蒸気を出している

水蒸気を出すのは、人の暮らしや外の空気だけではありません。
建てたばかりの家では、建物そのものが大量の水分を吐き出しています。

その主役が基礎のコンクリートです。コンクリートは練り混ぜに使った水で固まりますが、
固まったあとも、反応に使われなかった分の水が長い時間をかけて少しずつ蒸発していきます。
乾ききるまでには年単位の時間がかかり、とくに最初の1年でいちばん勢いよく水分が抜けていきます。

木材も同じです。構造材や下地に使われた木は、引き渡し後も乾燥が進み、含んでいた水分を室内へ少しずつ放出します。

この建物からの水分は、冬の乾いた時期には適度な加湿になって有利に働くこともありますが、
夏は室内の湿度をさらに押し上げる不利な方向に働きます。
新築の最初の12年は、まだ家が乾ききっていない時期だと考えておくとよいでしょう。

 

夏は、壁を通って外から水蒸気が入ってくることもある

277.923ng/m2・s・Pa×300m2×3600g/h×(3397-1901)=449.03g/h × 12h=5,388.36 g  /12h    半日で5.3ℓ進入してくることも!? 

 

水蒸気の入口は、窓や換気だけではありません。水蒸気は、ときに壁そのものを通り抜けて、外から室内へ入ってきます。

カギは「水蒸気は、量の多いほうから少ないほうへ動く」という性質です。
冬は暖かい室内のほうが水蒸気が多いので、流れは室内から外へ向かいます。
ところが夏は逆。蒸し暑い外気のほうが水蒸気をたっぷり含み、冷房で冷えた室内のほうが少ない。
すると流れは外から室内へと向きを変えます。雨も風もはじく壁が、目に見えない水蒸気に対しては「入口」になってしまうのです。

理由は建材ごとに決まっている「透湿抵抗」という性質です。
これは水蒸気の通しにくさを表す数値で、大きいほど水蒸気を通さず、小さいほどよく通します。
石こうボードやビニールクロス、断熱材、合板、防湿・透湿シートなど、
壁は何層もの建材を重ねて作られますが、それぞれの透湿抵抗はまちまちです。
だから、どの材料をどんな順番で組み合わせるかによって、
壁全体が水蒸気を「せき止める壁」になるか、「通り抜けさせる壁」になるかが決まってきます。
組み合わせ次第では、水蒸気が壁を抜けて室内側まで入り込むことも十分あり得るのです。

実際にモデル外壁で計算してみると、冷房した室内(25℃60%)に対して蒸し暑い外気(30℃75%)がぶつかるとき、
外皮全体ではおよそ半日あたり約5.3リットル——ペットボトル約2.7本分の水蒸気が、壁を通って室内側へ移動します。
屋根や外壁を構成する材料の透湿抵抗の組み合わせ次第で、この量は大きく変わります。

 

温度ではなく、「水蒸気の量」で考える

 

こうして見ると、家の中の水蒸気は、自分たちの体から、台所やお風呂から、新築の床下や壁から、
そして壁を通って外からも——思っている以上に、いろいろな方向からやってきます。

どれも完全に止めることはできません。だからこそ、出す量を減らし(室内干しや開放型暖房を控える)、
こまめに追い出すこと(換気と除湿)が、快適な湿度を保つ近道になります。
そして梅雨や夏のように外のほうが湿っている時期は、窓を開ける換気よりエアコンの除湿が頼りになります。

空気中の水蒸気は目に見えない。
だからこそ「外が涼しいから」「窓を閉めているから」という思い込みではなく、
いま空気にどれだけ水蒸気が含まれているかで考える。
それが、一年を通じて快適な家で暮らすためのいちばんのコツです。

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