「なんとなく心地よい」には、ちゃんと理由があります。
家の心地よさは、広さや設備の豪華さだけで決まりません。
朝の光がどこに落ちるか。風がどこを通り抜けるか。音が反響しないか。視線が落ち着くか。
日々の体感を左右するのは、目立たない“設計の積み重ね”です。
私たちは、見た目のデザインだけでなく、暮らしのリズムや気分まで整う家を目指します。
帰ってきた瞬間に、ふっと肩の力が抜ける。
そんな家には、必ず設計の理由があります。
間取りより先に、「居場所」から考える
「LDKは何帖必要ですか?」よりも先に、私たちはこう考えます。
この家族は、どこで落ち着くのか。どこで笑うのか。どこで一人になれるのか。
窓辺で飲む朝の一杯。子どもが宿題を広げるカウンター。
夕方に本を読むソファの背中側。家事の合間に立ち止まれる小さな余白。
暮らしの中に“ちょうどいい居場所”をいくつもつくると、家の心地よさはぐっと上がります。
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視線が落ち着く(背中を預けられる壁、抜けの方向、天井高さの緩急)
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気配が伝わる(家族とつながりつつ、干渉しすぎない距離)
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暮らしが変わっても使える(用途を固定しすぎない余白)
「広い」より、「落ち着く」。
その感覚を、図面の中で形にしていきます。
敷地の力を読み解き、味方にする
同じ間取りでも、敷地が変われば心地よさは大きく変わります。
周辺環境、道路や隣家の位置、視線の抜け、日射、風向き、音。
条件を丁寧に読み解いて、光や景色は取り込み、気になる要素はやわらかく外す。
敷地のクセを、住まいの魅力に変えるのが設計の役割です。
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南側が開けないなら、光を入れる“方向”を変える
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視線が気になるなら、窓の高さ・位置・抜けの先で解決する
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風の通り道をつくり、季節の体感を整える
「この土地だからこそ気持ちいい」
そう言える住まいを目指します。
窓は“明るさ”だけではなく「景色」と「体感」で決める
窓は大きければ良いわけではありません。
大きすぎる窓は眩しさや暑さ、視線ストレスを生むこともあります。
私たちは、窓を“開口”としてではなく、暮らしの体感をつくる装置として設計します。
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朝の光がやさしく差し込む位置
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季節で変わる日射の角度
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外の緑を切り取る高さ
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夜、カーテンを閉めても落ち着く窓の量
「どこに、何が見えるか」
「そこに立ったとき、気分がどう動くか」
そこまで想像して、窓を一つひとつ決めていきます。
陰影のある室内が、心を落ち着かせる
心地よい空間は、いつも均一に明るいわけではありません。
やわらかな陰影があると、目も心も疲れにくくなります。
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光を“回す”ための壁や天井の設計
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直接光と間接光の組み合わせ
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昼と夜で表情が変わる照明計画
写真映えだけではなく、日常で「ずっと心地いい」明るさをつくります。
庭と室内をつなぐ「中間領域」
軒下、土間、ウッドデッキ、半屋外の居場所。
外でも中でもない“間(ま)”があると、暮らしの幅は一気に広がります。
休日のコーヒー。子どもの遊び。夕涼み。雨の日の外時間。
家の外側までを住まいとして設計し、日常を少しだけ特別にします。
庭は「飾り」ではなく、暮らしの居場所のひとつです。
家事と動線は、暮らしを支える「静かな設計」
心地よさは、意匠だけでなく日々の動きやすさでも決まります。
片付く、回る、散らからない。
家事動線と収納を整えることは、暮らしのストレスを減らす“静かな設計”です。
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しまう場所が自然に決まる収納計画
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回遊動線に頼りすぎない、迷わない動線
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生活感が出る場所と見せたい場所の切り分け
「頑張って整える家」ではなく、自然に整う家を目指します。
設計でつくるのは、暮らしの「気分」まで
図面の正解を探すのではなく、住まい手の時間が心地よく流れるかを大切に。
対話を重ね、敷地を読み、光と風と視線を整え、居場所をつくる。
その積み重ねが、住んでからじわじわ効いてくる心地よさになります。
私たちは、暮らしに寄り添う設計を、ひとつひとつ丁寧に。
この言葉にふさわしい住まいを、形にしていきます。