C値はいくつが理想? エコハウスを実現するための必要なC値はどれくらいか?
高気密高断熱という技術が広く浸透してから、技術者同士で「気密」を語る機会はめっきり減りました。
ところが、お客様とお話しすると意外と「なんとなくしか知らなかった」という声も多い。
そこで今回は、気密性能の基本と、換気が“設計どおりに働く”ための現実的な目標値を整理します。
C値(隙間相当面積)とは?
C値は「家の床面積1㎡あたり、どれくらい“隙間”があるか」を表す物差しです(単位:㎠/㎡)。
たとえばC値1.0は、床1㎡あたり1㎠の隙間があるという意味。
設計図に書ける数字ではなく、施工品質の積み重ねの結果として“実測で決まる”数字です。
だからこそ、気密測定は品質確認として、とても価値があります。
気密を高くする意味とは?
合板の継ぎ目に気密テープ、室内側全面に防湿気密シート、コンセントボックスを気密コンセントカバーで覆う等々。
こうした気密施工は、意図しない漏気を減らし、家の性能を「設計どおり」に働かせるための土台です。
黎明期には「気密をとると息苦しくなる」と誤解されがちでしたが、実際は逆。
冬は閉めて暖かく、春秋は窓を開け放して風を楽しみ、空気の澱みを感じたら換気扇でしっかり入れ替える。
住まい手がコントロールできることが、心地よさにつながります。
C値が効いてくる3つのポイント
1)体感が良くなる(隙間風・温度ムラが減る)
冬の「足元が冷える」「暖房が効きにくい」は断熱不足だけでなく、漏気によるドラフトも大きな原因です。
さらに、壁の中の空気が勝手に動くと断熱材が設計どおりに働きません。
気密が上がるほど室内の空気が落ち着き、静かで穏やかな温熱環境に近づきます。
例えるなら、寒い夜にダウンジャケット(断熱)を着るとき、当然チャック(気密)も閉めます。
どれだけ暖かいダウンでも、チャックが開いていれば冷気が入り体温は逃げてしまう。
家も同じで、断熱を活かすには漏気経路を減らす「気密」が前提です。
2)換気が効くようになる(計画換気が成立する)
24時間換気は「入れて、出す」仕組みですが、気密が悪いと“意図しない場所”から空気が入ります。
給気口から換気扇まで新鮮空気が部屋を巡らず、近道して排気される(ショートサーキット)。
その結果、臭い・湿気・CO2が籠る“換気のムラ”が起きやすくなります。
高気密は換気設備を活かすための前提条件でもあります。
3)建物の耐久性に効く(壁の中の結露リスクを減らす)
室内の湿った空気が隙間から壁の中に入り込むと、冷えた部分で結露します。
古い建物を解体すると、うっすら黒いカビを目にすることがありますが、壁内結露で断熱材が湿り続けた痕跡と考えられます。
温暖地では顕在化しにくい一方、寒冷地では深刻で、北海道では1970年代後半の高断熱黎明期に「ナミダタケ事件」として問題化しました。
断熱だけ厚くして気密防湿を取らないと、建物を腐らせてしまう。これは今も教訓です。
築45年戸建て(推定C値10以上)で“気密不足”を体感した話
私は15年ほど前、築45年の戸建て住宅で気密不足の住環境を体験していました(苦笑)。
おそらくC値10以上。石油ファンヒーターをつけると足元に冷たい気流を感じ、コンセントに手をかざすと空気の流れが分かるほど。
暖房を強くしても空気は天井・壁を伝い、屋根裏から逃げていく「地球を暖める」状態でした。暖房を止めるとあっという間に温度が下がる。
低断熱との合わせ技で、とにかく寒い。もう一つ印象的だったのが“換気の効かなさ”。
夕飯がキムチ鍋の日、食後しばらく換気扇を回しても翌朝ほんのり残り香がしていました。
今なら、給気経路が定まらずショートサーキットしていたのだと分かります。
新居で「換気が効く」環境を体験して初めて、過去の違和感の正体に気づくものです。
当時の自宅の漏気量を、岐阜県立森林文化アカデミー教授・辻允孝先生が開発した「環境デザインサポートツール」で試算してみたところ、
(条件:延床40坪、気積316m³、内外温度差20℃〔室温20℃/外気0℃〕、風速6m/s)
なんと、2.11回/h!1時間で家の空気が2回以上自動的に入れ替わっていました。
キッチンのレンジフードを強運転でつけっぱなしにしているのと同じ状況でした。

では、どれくらいのC値が良いのか?
C値は0に近いほど良いのは事実ですが、0を目指すのは労力とコストが現実的ではありません。
そこで目安としてよく引用されるのが、「北方型住宅の熱環境計画」など北海道の研究資料に基づく考え方です。

「北方型住宅の熱環境計画」より「気密性能C値と自然給気口からの給気量の関係を表すグラフ」
最低限クリアするべきライン:C値1.0以下
3種換気でC値=1.0だと、給気口から入る空気が全体の約半分程度に留まる(=残りは漏気で出入りする)という指摘があります。
かつて「高気密」と言われた水準ですが、換気を設計どおりに成立させるという意味では、正直物足りない。
高性能住宅の入口といったところです。
「現実的な理想」とされるライン:C値0.5以下
民間研究機関や実務者の間では「国の基準は低すぎる」という声が長年あり、HEAT20では目安C値を0.7±0.2(0.5〜0.9)としています。
ボード気密を丁寧に施工し、貫通部・取り合いを潰していけば、十分に狙える現実的な範囲です。
ここまでが“断熱を活かす・体感を良くする”ための目安でした。
では、「換気効率」という観点で、もう一段踏み込むとどうなるでしょうか。
換気効率から逆算すると、C値0.36以下が理想
気密と換気効率を同時に計測した希少な資料として、北欧住宅研究所の川本清司氏による『気密性能と換気計画』があります。
川本氏が約80棟の住宅を調査して回り、実際の換気の成立状況を測った結果がまとめられています。
同書では、漏気の影響が実質的に無視できる目安として、第一種換気:C値0.09cm²/m²、第三種換気:C値0.36cm²/m²と示されています。
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第一種換気 |
第三種換気 |
第一種換気で「漏気がなくなる」C値が 0.09cm²/m² と聞くと、「じゃあ0.09を目標にすべき?」と思うかもしれません。
実際、技術的には達成は可能です。
丁寧に気密ラインを整理し、貫通部の処理を徹底し、現場のクセや弱点を潰していけば、0.1を切る数値自体は“狙える領域”にあります。
ただし、ここで一度冷静に考えたいのは 「0.36を下回った先で、暮らしの体感や換気の安定性がどれだけ増えるか」 です。
第三種換気の場合、C値0.36を境に“総漏気量が実質ゼロ”となり、空気の出入りは「給気口→室内→排気」という計画経路に収束します。
つまり、換気効率という観点では 0.36を切った時点で目的の大部分は達成される と捉えられます。
(※床面積150㎡・必要換気量0.5回/h・高さ5.3m・内外温度差30℃・風速6m/sなど、提示表の条件において)
ここからさらに0.2、0.1、0.09へ…と数値を削っていくことは、
言い換えると 「漏気の影響がすでに無視できる領域で、さらにゼロに近づける」 という作業になります。
もちろん“気密は高いほど良い”のは真実ですが、0.36→0.09の差は、換気の成立という観点では微々たる改善になりやすい。
にもかかわらず、その先は一気に難易度が上がります。工数もコストも跳ね上がり、再現性が難しくなります。
どこまで数字を追求できるのか?大工さんと電気屋さんの探究心
気密に関わってくる工程は、主に大工工事と電気工事。弊社の大工さんと電気屋さんは、いつも感心するほど丁寧で勉強熱心。
まさに職人気質の人たち。気密測定のたびに、「あ〜、多分あそこが弱いんだな〜」「あれ対策したら効くんだね〜」など工夫を重ねています。
少し前の現場(2階リビングで階下にビルトインガレージの難易度高めの設計)の測定ではC値=0.03を記録。
探求への挑戦は止まらず、「もっと挑戦してみようか?」というので、工数を記録して貰いながら頑張ってもらいました。
いよいよ、現場にて気密測定。
小数点第3位は四捨五入される為、C値0.015は0.02と表示されます。
結果はC値=0.015。JIS規定の測定法に則り、サッシを目張りしたり、測定器を設置した部屋のドアを
目張りして実効測定範囲を狭めるような“ごまかし”は一切していません。
この現場は気密層を貫通する配線配管が普段の倍以上ある現場でしたが、この数値はお見事。
コツは「穴を空けたら、忘れないうちにすぐ塞ぐ」だそうです。
まとめ ベストバランスはC値=0.3以下
C値は、突き詰めれば0.1未満、現場条件によっては0.03や0.015といった数字まで“狙うこと自体”は可能です。
ですが、0.3を切ってから先の改善は、体感や換気効率の改善が小さくなる一方で、工数とコストが急増します。
家の性能は気密だけで決まらず、日射取得・遮蔽、熱橋対策、換気経路、空調計画、など他にも重要な要素が多い。
仕上げの美しさなど手間を掛けたいところはたくさんある。
だから私たちは、限界挑戦で得た弱点と対策のノウハウを標準施工に落とし込み、気密測定で毎回確認する運用へ。
換気効率の理想(0.36以下)を確実に満たすため、標準目標は余裕を見てC値0.3以下に設定しています。

