高気密住宅の衣類乾燥機は電気とガスどっち? 違いと選び方を解説

公開日:2026/04/13(月) 更新日:2026/04/13(月) 設備

イシハラアーキテクト代表の石原健です。今回は一級建築士の視点で、ガス式・電気式の衣類乾燥機の特徴と選び方を解説します。

家づくりの打ち合わせで、意外と盛り上がるのが「洗濯動線」の話です。共働き世帯が当たり前になった今、衣類乾燥機の導入を前提に間取りを考えるご家庭がほとんどではないでしょうか。

「ガスと電気、衣類乾燥機はどちらを選ぶべきか」高気密の高性能住宅では、換気への影響まで考慮する必要があり、一般的な住宅以上に慎重な判断が求められます。

結論から言えば、どちらにも明確なメリット・デメリットがあり、万人にとっての正解はありません。ただし、それぞれの特徴を正しく理解しておけば、暮らし始めてからの後悔は防げます。この記事では、ガス衣類乾燥機の代表格「乾太くん」(リンナイ)と、電気ヒートポンプ式乾燥機「FUWATO」を中心に、高性能住宅ならではの視点で両者を比較します。

 

ガスの「乾太くん」と、電気の新星「FUWATO

衣類乾燥機といえば、長らく「使い勝手を重視するなら乾太くん一択」と言われてきました。圧倒的な時短性能とふんわりした仕上がりで、一度使うと手放せないという声が多い製品です。

一方、電気式はこれまで「乾燥が遅い」「仕上がりがいまひとつ」という印象がありました。しかし近年、排湿方式を根本から見直したFUWATOが登場し、状況が変わりつつあります。従来のヒートポンプ式の弱点とされてきた乾燥効率を大幅に改善し、電気式の選択肢として十分に検討に値する製品に仕上がっています。

 

乾燥時間:ガスの圧倒的なスピード

 

もっとも差が出るのが乾燥時間です。乾太くんは5kgの洗濯物をおよそ5060分で乾燥させます。電気ヒートポンプ式は同じ量で2.53.5時間。ガスは電気の約3分の1の時間で終わる計算です。

この差は日々の家事で想像以上に効いてきます。たとえば、色移りしやすいものを分けて2回洗いたい日。乾太くんなら1回目が約1時間で終わるので、朝の支度をしている間に2回分の洗濯・乾燥が完了します。電気式では1回目だけで3時間前後。2回目も合わせれば67時間かかり、朝に回して夕方に取り出すスケジュール感になります。乾燥してくれる恩恵は同じですが、「2回に分けたいとき」の使い勝手には明確な差が出ます。

子育て中で洗濯量が多いご家庭にとって、この「時短」は、衣類乾燥機を選ぶうえで何にも勝るメリットかもしれません。

 

運用コスト:電気式に大きな優位性

 

ランニングコストでは電気ヒートポンプ式が大きくリードします。毎日1回の運転で試算すると、電気式の月間コストはおよそ1,000円前後です。

一方、ガス式のコスト感については、私の実体験を。我が家ではプロパンガスを使っており、ガス機器はガスレンジと乾太くんの2つです。毎日1回、たまに2回運転で、月のガス代は基本料金込みでおよそ5,000円。つまり、ガスレンジの使用分を差し引いて多めに見て、乾太くんの運用だけで月2,5003,000円程度はかかっている計算になります。

電気式との差は年間で約18,00036,000円。10年で1836万円。さらにオール電化の場合に基本料金全額が上乗せに。せっかく性能を突き詰め、冷暖房コストを最小限に抑えた住宅を建てるなら、乾燥機の運用コストまで含めたトータルの光熱費で判断する視点も大切です。太陽光発電を搭載していれば、日中の自家消費で電気式のコストをさらに下げることもできます。

 

衣類の傷み:温度よりも物理的な力

 

「ヒートポンプ式は温度が低いから衣類が傷みにくい」とよく言われます。ガス式80℃以上に対し、電気式は60℃前後。ですが、個人的には温度よりもドラム回転による「捻り」の力のほうが衣類の傷みへの影響は大きいと考えています。乾燥機のドラムは回転しながら衣類を持ち上げ、落下させる動作を繰り返します。この物理的な力は温度に関係なく衣類に負荷をかけます。

温度が低い電気式であっても、3時間以上ドラムで揉まれ続ければ、物理的な負荷は相応にかかります。温度だけを理由に「電気式なら衣類が傷まない」と判断するのは、カタログを鵜呑みにしすぎな気がします。どちらの方式でも、デリケートな衣類は乾燥機に入れず別で扱うのが現実的です。

 

設置スペース:乾太くんの方が柔軟

 

 

乾太くんは専用台や造作棚で洗濯機の上に積むことができ、下の洗濯機は縦型でもドラム式でも対応可能です。FUWATOも縦置きに対応していますが、下が横型・斜めドラム式であることが条件になります。縦型洗濯機との組み合わせでは横並びになり、広いスペースが必要です。洗濯機の種類を問わず柔軟に対応できる点では、乾太くんに一日の長があります。

乾燥機と洗濯機の組み合わせによって洗濯室まわりの寸法や配管計画が変わりますので、設計の早い段階で方針を決めておくのが安心です。

 

高気密住宅と乾太くんで問題視される「排気」と「外気流入」

 

ここからが高性能住宅を検討されている方にとって、もっとも重要なポイントです。

乾太くんは運転中100/h前後の排気を屋外に出します。延床35坪程度の住宅の計画換気量がおよそ150/hですから、計画換気量の約2/3に相当する空気が乾太くん1台で一気に排出していることになります。その分だけ外気が室内に流入し、建物全体が強い負圧状態に陥ります。

高い気密性能を実現し、給排気を緻密にコントロールしている住宅において、これだけの負圧が生じるのは見過ごせない問題です。

一番問題になってくるのが、夏季の除湿負荷です。100/hの外気流入は、高温多湿の空気が大量に入り込むことを意味します。せっかくエアコンで温湿度をコントロールしている室内環境が一気に乱れ、除湿のために余計な電力を消費します。冬の冷気だけでなく、夏の湿気も含めて考えると、排気対策の重要性はより明確になります。

もうひとつ、乾太くんに必要な排湿筒は、非使用時にも外気と繋がっているため熱橋(ヒートブリッジ)になるリスクがあります。断熱性能を突き詰めた住宅で、壁を貫通する金属管が常時外気にさらされている状態は好ましくありません。

 

だからこそ「設計」で解決する

 

そうなると「乾太くんはやめた方が良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし当社では、乾太くんを採用する場合には、これらの問題に対して設計段階で明確な対策を講じています。

まず、洗濯室エリアを居住空間から閉め切れるように設計します。そのうえで乾太くんの近くに電動給気シャッターや開閉できる窓を設け、排気された分の空気を洗濯室内でショートサーキットさせます。こうすることで外気流入は洗濯室内で完結し、リビングや寝室の温熱環境や計画換気への影響、夏季の除湿負荷も最小限にできます。排湿筒にも断熱処理とダンパーを標準的に施工し、熱橋としての影響を抑えています。乾太くんのデメリットとされる排気問題は、設計次第で解決できるのです。

一方、電気ヒートポンプ式は排気がそもそも発生せず、負圧も除湿負荷も排湿筒も不要です。計画換気への影響を気にせず導入できる点では、高気密住宅との相性はシンプルに良いと言えます。

 

数字だけでなく「生活の質」で考える

 

ガス式は時短力と設置の柔軟性。電気式はコストの安さと排気問題の無さ。それぞれの長所は明確です。

「年間万円の差だから電気が得」「乾燥時間が3倍だからガスが上」——数字だけを見ればどちらかに軍配が上がるように見えます。しかし、本当に大切なのは「自分たちの暮らしの質がどう変わるか」という視点です。

パワフルな乾太くんで、朝の1時間で洗濯が完結し、週末のまとめ洗いから解放される。あるいは、FUWATOでコストを気にせず毎日気兼ねなく乾燥機を回せるようになり、部屋干しのストレスから完全に解放される。どちらも数字には表れにくい「生活の質」の向上です。

そして、どちらか一方に決めたら一生そのままというわけでもありません。たとえば、洗濯量が多い子育て期間中は時短を優先して「ガス」を選び、子どもたちが独立して洗濯量が減ったタイミングで「電気」に切り替える。ライフステージの変化に合わせて乾燥機を選び直すという考え方もあります。(プロパンの場合、契約期間の縛りもあるので検討が必要)

 

ご家族の洗濯量、生活のリズム、太陽光発電の有無、そして「時間のゆとり」と「経済的な安心感」のどちらに価値を感じるか。それはご家庭ごとにまったく違いますし、同じ家庭でも時期によって変わります。それぞれの特徴を理解したうえで、今のご自身の暮らしに合うほうを選べば、どちらでも満足度の高い毎日になるはずです。

コストや除湿負荷の数字だけを根拠に「乾太くん=悪」とする論調が最近増えていますが、「時短」や「暮らしの質」という視点が抜け落ちていないか——。そんな違和感があったので、この記事を書いてみました。

 

乾燥機の選定は間取りや換気計画にも直結します。特に高気密・高断熱住宅では、方式によって洗濯室まわりの設計が変わります。設計の初期段階でご相談いただければ、換気計画や洗濯動線を含めた最適なプランをご提案できます。高気密住宅での衣類乾燥機選びで迷われている方は、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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