家づくりの前に、なぜ「間取りの話」をしないのか
こんにちは。インテリアコーディネーターの石原紗知江です。
埼玉県北部や群馬県南部エリアで、家づくりの相談をお受けしています。
今日は、「なぜ私たちは、間取りの話から始めないのか」についてお話しします。
少し遠回りに感じるかもしれませんが、そこにはきちんとした理由があります。
図面より先に整える、暮らしと間取りの前提

家づくりのご相談をすると、
「どんな間取りにしたいですか?」と聞かれる——
そんなイメージを持たれている方も多いかもしれません。
実際に、「いくつかのプランを見せられて、その中から選んだ」というお話もよく聞きます。
ですが、私たちはその進め方はしていません。
すぐに図面を描くことも、
間取りの話をすることもありません。
なぜなら、間取りは“最後に形になるもの”であり、
最初に決めるものではないと考えているからです。
残念なのは、この順番を逆にしてしまう方がとても多いのです——
では、私たちは最初に何をお聞きしているのか。
それは、特別なものではなく、
毎日の過ごし方や大切にしている暮らしについて、
日常の中にあるものを共有させていただきます。
1.何気ない「1日の過ごし方」にヒントがある

家づくりというと、つい「どんな間取りにするか」や「どんな設備を選ぶか」に意識が向きがちです。
私たちと一緒に家づくりをされた方から、
「カタログを広げて選ぶことが、家づくりだと思っていた。」と言われたことがあります。
私たちにとっては衝撃的な言葉でしたが、他社では珍しくないことのようですね。
実際に、設備や仕様を一つひとつ比較しながら選んでいく進め方は、
分かりやすく、安心感があるように感じられるのかもしれません。
また、目に見えるものを基準に考えられるため、「決めている実感」も得やすいものです。
もちろん、カタログを見ながら選んでいくこと自体が悪いわけではありません。
ただ、それだけでは、そのご家族にとって本当に合う形にはなりにくいと感じています。
というのも、カタログに載っているのは“モノ”であって、
そのご家族の暮らしそのものではないからです。
どんなに魅力的に見えるものでも、
日々の過ごし方や習慣と合っていなければ、
少しずつ違和感が積み重なってしまうことがあります。
だからこそ私たちは、何を選ぶかの前に、
どのように暮らしているのかを丁寧にお聞きすることを大切にしています。
朝起きてから家を出るまでの流れや、
帰宅してから寝るまでの過ごし方など。
どこで身支度をしているのか、
どこに物を置いているのか、
家の中で家族が混雑する場所はどこなのか。
ひとつひとつは些細なことのように見えますが、
こうした何気ない日常の積み重ねの中に、
ご家族にあった暮らしやすさのヒントがたくさん隠れているものです。
例えば、「朝はいつも時間に追われている」と感じている方でも、
実際の動きをたどっていくと、行動している範囲や距離、
物の置き場所や動線のちょっとした重なりが原因になっていることがあります。
逆に、「特に困っていない」と感じている場合でも、
無意識に繰り返している動きの中に、
その方にとって心地よい距離感や配置のヒントが見えてくることがあります。
こうした日々の過ごし方を丁寧に見ていくことで、
そのご家族にとって無理のない間取りの方向性が、少しずつ見え始めます。
この段階で無理に間取りを決める必要はなく、
方向性が見えてくることがとても大切だと感じています。
2.「困っていること」よりも大切なこと

日々の過ごし方をお聞きしていると、
「特に困っていることはないです」とおっしゃる方も少なくありません。
それは、とても自然なことだと思います。
ただ、家づくりにおいては、
”困っていること”だけを手がかりに要望をくみとってしまうと、
今の生活の「困りごと」だけでは拾いきれないことがあり、
たとえ改善されたとしても、別の違和感が生まれてしまうこともあるのです。
そこで私たちが大切にしているのが、
ご自身でもあまり意識していない「無意識の習慣」です。
たとえば、帰宅してから自然と物を置く場所や、
何度も行き来している動線、気づけば毎日繰り返している行動。
理由はないけれど「なんとなくここに置いている」、
特に決めたわけではないけれど「気づいたらこの順番で動いている」。
誰でも、多かれ少なかれ、こうした習慣があるのではないでしょうか。
私自身も、朝食の準備で無意識の行動があります。
味噌汁の出汁をとることが習慣になっているのですが、
週に一度パンの日があっても、気づけばいつもの準備をしてしまうことがあります。
鍋に入れる水の量も、家族四人分を感覚で注いでいます。
長く続けていることほど、無意識になっていくものです。
そんな日々の積み重ねの中に、
その方にとっての“使いやすさ”や“心地よさ”のヒントが隠れています。
一方で、その習慣が、
実は小さなストレスの原因になっていることもあります。
遠回りの動線や、使いにくい配置を、
無意識のうちにカバーしているケースも少なくありません。
だからこそ私たちは、
「何に困っているか」だけでなく、
「普段どんなふうに動いているのか」に目を向けています。
そうすることで、表に出ていない違和感や、
本当に大切にしたい暮らしの軸が、少しずつ見えてきます。
3.理想の暮らしよりも「今の暮らし」を見つめる

家づくりや新しい生活のことを考え始めると、
「こんな暮らしができたらいいな」という理想が自然と浮かんできます。
広々としたリビングや、整った収納、すっきりと片付いた空間。
SNSや雑誌で見るような住まいに憧れる方も多いと思います。
もちろん、理想を持つことはとても大切です。
それが、これからの暮らしを考えるきっかけにもなります。
ただ、その理想だけをもとに間取りを考えてしまうと、
どこかに無理が生まれてしまうことがあります。
たとえば、「片付けやすい家にしたい」と思っていても、
今の生活の中でどのように物を使い、どこに置いているのか、
行動や物の流れを理解し、整理することをしないと、
新しい住まいでも、今と同じことが起きてしまうことがあります。
だからこそ私たちは、理想を広げる前に、
まずは「今の暮らし」を丁寧に見つめることを大切にしています。
どんなふうに1日を過ごしているのか、
どんな習慣があり、どんなことに心地よさを感じているのかを聞かせてください。
私たちが家づくりをしたのは、もう5年以上前になりますが、
家族で色々なことを話しました。
内容は「どんな暮らしがしたいか」
私たちの暮らす住まいはコンセプトハウスとして、家づくり相談や打ち合わせの場所となっています。
当時の私たちが「今の暮らし」を見つめて、考えた住まいです。
家族の習慣やそれぞれの心地よさがかたちになっています。
私たち家族の家づくりに関しては、打ち合わせの時など
エピソードを交えながらお話ししていますが、
いつかこのコラムでもお話しできたらいいですね。
なにも特別なことではなく、日々の積み重ねの中に、
ご家族らしい「暮らしのヒント」があるのだと思います。
今の暮らしの中にある“当たり前”を一つひとつ見ていくことで、
無理のないかたちで、これからの住まいの方向性が見えてきます。
理想を追いかけるのではなく、
今の暮らしを土台にして少しずつ整えていくこと。
それが、長く心地よく暮らせる住まいにつながると、私たちは考えています。

間取りは、暮らしをもとに形になっていくものです。
だからこそ私たちは、
図面を描く前に、日々の過ごし方や習慣、
そして今の暮らしについて丁寧にお話を伺っています。
打ち合わせの時に、少し遠回りに感じるかもしれませんが、
この時間があることで、無理のない、長く心地よく暮らせる住まいにつながります。
埼玉県深谷市を中心に家づくりをご検討中の方、
何から考えたらいいか迷われている方がいらっしゃいましたら、
一度、今の暮らしについて一緒に整理するところから始めてみませんか。
